第1話

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「ねえ、カクテルはここに書いてあるものしかないの?」  開いたカクテルメニューから視線を私に移し、悠が問いかけた。 「この前みたいに、好きな風味や色を教えてくれたら、それに合わせるよ」  微笑を浮かべた悠が、 「それじゃあ、レインボーってカクテル作って欲しい」と言った。 「レインボー……ねえ」  難易度がやたらと高いカクテルだった。材料の糖度を利用して、いくつもの異なる色の層を重ねないといけない。しかも、決して色が混じらないように、だ。 「お客様の注文なんだから、嫌そうな顔しないでください。もしかして作れないとか?」 「そんなことはないよ。けど、いい趣味じゃないね。どこで、そんな悪趣味なカクテル知ったの?」  材料となるリキュールをカウンターに並べながら、悠に訊く。 「カクテルブック見てたら、すっごく綺麗だと思ったんです」と、嬉しそうな顔で答えた。
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