第1話

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 先程の説明に一切偽りはない。初めウイスキーは好みではなく、むしろ強烈な癖がある匂いのため敬遠していた。あるとき先輩バーテンダーがくれたプレミアもののモルトを口にし、ウイスキーの奥深さを知った。  それから私は同じボトルを探したのだが、手を出せる値段ではなかった。  かの味わいを欲した私は、代わりにリーズナブルなウイスキーを頻繁に飲むようになった。もちろん、芳醇さ、深み、ピート香、舌触り……その他多くの点で及ばないものの、例のボトルを連想させる類似性があった。      悠は瞳を輝かしながら、私の話を聴いていた。悠と共にいるとき、無意識に悠と昔の彼女を較べていた。瞳の輝き、反応の仕方、意識せずに行う仕草、笑い方……実に多くのことで比較していた。それはつまり、悠に心惹かれつつあるということだった!    悠と昔の彼女には、実に似ていないところが多い、と私は認めている。  昔の彼女は、悠のように無邪気ではなかった。どこか醒めているのだが、それなのに、ときおり子供のような一面を覗かせる瞬間があった。おそらくは、私にだけ見せている彼女の姿であった。その稀にしか見せない子供っぽさが、私を惹きつけていた。しかし、あくまでも稀にしか現れない。だから悠のように明るいわけでもなかった。  他にも外見、内面問わずに対照的に思えることが多い。それでありながら惹かれているのは何故か?
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