第1話

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 愛おしさを覚えていたのだ。    それゆえ私は、タイプが異なる2人を比較したのではないか。  未だ発見できずにいるが、おそらく2人には類似性があり、それこそが私を惹きつけているはずだ。それこそが生涯にわたり私の激情を生ぜしめる類似性ではないか、と無意識のうちに比較していたのだ。  その日も悠は、二杯だけでチェックし、帰り際、 「また来るから、今度こそレインボー作ってくださいね」 と、告げて去った。  まだ外は暗くなかった。西日が最後の力を振り絞り、街をワイン色に染めていた。   そんな風景の中に溶け込んでいく悠を見ながら、 「明るいうちから酒を飲むとは、なんて子だ」 と、私は、私の道徳的な声に従い一人呟いた。    それと同じタイミングで悠が振り返った。声が届かない距離なのに、先程の呟きが聴かれたのでは、と私は危惧した。    悠は口を動かしながら、大きく手を振った。    私は軽く手を挙げた。同時に、聴かれてはいないようだ、と胸をなで下ろした。    
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