第1話

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   翌週、悠は来店しなかった。悠にも都合があり、毎週姿を現すことは期待できないというのに、こんなことにすら自分は切なさを感じた。  さらに次の週、大学から帰宅する途中にでも寄るのではないか、と期待していた。  しかし何事もなく平日は過ぎた。金曜、土曜と多少忙しい日が連続した。やはり、彼女は来なかった。    日曜日の街は人影少なく、店が暇になることを予示していた。日曜日らしい光景である。自分はむしろ、金曜、土曜と繁盛する日の後に、閑散とした光景を見ることで、月曜が祝日でないことを確認していたくらいだ。    とはいえ、閑古鳥の鳴く声に聞き入って、憂愁に浸るわけにはいかなかった。先輩が新しい店舗に移って数ヶ月経つというのに、私は先輩の遺産で食いつないでいるようなものだった。どうにか先輩と違う特色を発揮しなければいけない。そのためにはメニューを見直し、またホームページも色々と変更しなければならない。  遅々としながらも多少は進めてはいる。しかし作業している最中、悠の姿が頭に侵入して、思考を乱していくのだった。    
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