会議録1。

11/12
454人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
段々声が尻すぼみになっていくウィル、最初は慌てたように口火を切っていたがその言葉から本気で辛かったことは伺い知れた。 俺を掴む両腕は僅かに震えて、ブロンドの隙間から覗く耳は赤みを帯びていた。 ……そっか、そりゃそうだよな。 異国に独りきりで不安を感じないはずがないよな。 さっきは軽い口調で明るく振る舞っていたけど、あれはこの隣人なりの気遣いだったのかもしれない。 確かにウィルにとって、同年代で同じ大学に通う奴が隣に住んでいる状況はかなり有り難いんだろう。 仲良くなるきっかけが無いのが恐らく最大の難所。 「でも学部も違うし、接点なくて……頼むから、こんな生活力じゃ日本で生きてけないよ!ほ、他に俺が与えられるもの有れば何でもやる!だから本当、俺と、仲良くなって下さい………!」 「分かった!分かった泣き止め!ちょっと落ち着け!俺の話を聞け!」 せっかく整った顔も歪んで今にも床に崩れ落ちそうになったため、テーブルから離れウィルの隣へ移動した。 あとウィルには申し訳ないが余りにも必死すぎる姿がちょっと面白い。 本当すまん、コイツにとっては多分死活問題なのに。 しかし、だ。 コイツ微妙に勘違いしてないか? 「あーすまんウィル、少し言葉が足りなかった」 「うえ……?」 「俺はその考えが意味分からないって言いたかったんだ。有益とか変な関係作らなくったって、別にお前の飯くらいついでに作ってやるよ」 俺がそう言えば、ウィルは瞳が零れ落ちんばかりに瞠目し言葉を失ってしまった。 コイツ、本気でGive&Takeとか提案してたのかよ。 第一にその時点で意味が分からなかった。 「何でそんなビジネスみたいなノリで仲良くならなきゃなんねぇの?仲良くなるってそんなんじゃないだろ。俺そんな心狭くねぇし、あと英語習うのだけは真っ平後免」 「え?え?」 というのも元々俺はそのつもりだった。 こんな生活力じゃいつかふと隣訪ねた時白骨化していそうで気が気じゃない、放っておける訳がない。 「あー……だからな。接点はちょっと微妙だったかもしれないけど、これからよろしくな?」 「───っ!」 苦笑しながら頭をぽんぽん叩いたところでようやく理解したのか、感極まってまた瞳が潤んでいる。 俺だって今まで御近所付き合いに関心はなかったさ、でもこんな奴なら絶対楽しい。 それに同じ大学なら良い友達になれるかもしれない。 飯作るくらいオプションみたいなもんだ。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!