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コンビニから出るやいなや纏わりつくような熱気に襲われ、思わず顔をしかめた。
お陰様で近くにある電子温度計は連日変わらず37度をマーク、テレビや新聞も近年稀にみる猛暑だとこぞって取り上げ、続々と増えている熱中症患者の数をご丁寧に報じている。
目の前にある車道の向かう先が蜃気楼のように揺らいでいるのは多分幻覚なんかじゃない。
暑さで額から伝ってきた汗を拭い、嫌みなほど真っ青に晴れ渡った空を仰いだ。
そろそろ道端でぶっ倒れてる人間見つけても不思議じゃないな。
笑えない話だと思いつつ、今さっき買ったアイスを取り出して口に頬張った。
大学2年目の夏休み真っ只中。
実家に帰る訳でもなく、友達と旅行に行く訳でもなく、今年は適度なバイトをしながらのんびりと夏休みを過ごしている。
1年目は自由を得たとばかりに飲みサー仲間と夜を明かし、行ってみたかった土地へ旅行をし、遊び三昧の日々を送っていたが、2年目にもなると自由な生活にも慣れて落ち着いた毎日を送っていた。
今の所は順風満帆な俺の大学生活。
色々なタイプの人間との交流は新たな考えを見いだすことに繋がり、それなりの大金を持つことは自分の経理力を育ててくれる。
1日1日が本当に楽しい。
まあ正直、高校生の時に思い描いていた大人の世界とは違っていたけど。
もっと精神的にも大人になれるはずだったんだけどなぁ、変われた気がまるでしない。
こうやってアイス咥えて帰宅なんてのも高校時代と全く同じだったりする。
道路沿いの歩道が丁度青々とした並木の陰に差し掛かったので頭に乗せていた日除け用のタオルを肩に掛けた。
───にしても、だ。
「暑い、暑すぎる………」
堪らずひとりごちてしまった。
高校時代だってここまでは暑くなかった。
これが地球温暖化って奴なんだろうか、それなら割と本気で環境問題と向き合わなきゃならない。
まずはゴミの分別から、いや出来そうにないな。
氷河期と拮抗してプラマイ0とか。
これだな、よし地球頑張れ超頑張れ。
頭の片隅で何馬鹿なこと考えてんだ俺はと冷静な自分が突っ込みを入れる、一応まだ俺の脳は暑さにやられ切ってはいないらしい、安心した。
名残惜しいがアイスの最後の一口を食べ、棒を咥えたままアパートに向かう。
ああ、早くクーラーの効いた場所に行きたい。
アイスと一緒に買ったペットボトルのお茶をスーパー袋から取り出して顔に押し当てた。
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