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午後ティーは旨いけどさ、旨いけどそれが紅茶判断基準の一部に含まれてるって考えるとさっきの賞賛の価値がかなり下がる。
上げて落とされた気分だ。
「あ、大丈夫。午後ティーは量産製品だから俺の中のランキングは圏外だよ」
「……そりゃどうも」
「しかし日本は本当に美味しい物ばかりだなぁ。何でこう食欲を刺激する物を生み出せるのか」
ウィルのその言葉でふいにもう一つのイギリスへのイメージが浮上した。
イギリスって言えば、あれがあったな。
「───イギリスって、飯マズいもんなぁ」
「なっ、そ、それは聞き捨てならないぞ春馬!!」
俺のしみじみとした呟きに対してウィルが即座に反応した、余程気にしているらしい。
でも何たって日本のネット上でエゲレスなんて異名が付けられるレベルだからな。
正直料理に関しては最悪のイメージしかない。
「えげつないだろ、スターゲイジーパイとか」
「あれは伝統的な料理だ!べ、別に見た目だって結構綺麗だし中身は普通だって!」
「うなぎゼリーとか」
「あ、あれは確かにぶつ切りだから見栄えはしないけど、同じような料理はフランスにもある!」
「フィッシュ&チップスとか」
「待て!フィッシュ&チップスは普通に美味しい!」
ウィルが既に涙腺決壊の寸前まできていたので、俺は思い直して口を噤んだ。
この議論は流石に不毛すぎる。
あとウィルが可哀想になってきた。
「それにローストビーフもビーフシチューもイギリス料理だし、朝食は美味しいってよく言われるしっ………!」
「分かった、俺が悪かったから泣くな」
というか朝食美味しいってのは、それ以外の料理マズいから三食朝食にしろっていう皮肉じゃなかったか?
………まぁいっか。
興奮したウィルを再度席につかせて、自分も向かい合うように椅子を引っ張ってくる。
もうこの際ここで色々話をしよう、客もまだそんなに来ないし店長にバレなきゃ問題ない。
「なぁ、ちょっと今から交流会といかね?俺まだウィルのこと何も知らないし」
「………元々話せたらいいなって思って来たんだ、そっちの仕事が大丈夫ならゆっくり話したい」
「俺のことは心配するな」
椅子に深く腰掛け笑ってみせる、ウィルも返事をするように涙を拭い微笑んだ。
さて、じゃあ気になってたこと聞こうかな。
「ウィルってどうして日本に留学したんだ?」
「ああ、北○の拳の続きが気になってね。イギリスじゃ放送中止になって散々だったんだ」
「……………はい?」
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