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こんな面しといて褒められ慣れてませんとか言いやがった暁にはその金髪刈り上げにしてやろう。
「じゃ、じゃあその、俺からも質問!どうして春馬は経済学部に入ったんだ?」
しかしウィルは謙遜するより話を逸らすやり方を取った、しかもたった今後ろめたくなっていたことを。
これのせいで次は俺が焦る羽目になった。
どうしてピンポイントで痛い所を突いてくるんだ、こんな立派な話聞いた後で言えるわけねぇ。
「えっとだなー、将来もし店開くことがあったら役に立つかなぁって………思いまして」
「お店!春馬も立派な夢があるじゃないか!」
「あー、まぁ……」
う、嘘は言ってないぞ。
役には立つだろって理由も含めて経済学部入ったし、店の件はifの話をしただけだし。
俺が余計気まずくなって目を逸らす一方で、ウィルの目は一層子供のようにキラキラと輝いた。
そして詳しい詳細を聞き出そうとしてくるから堪ったもんじゃない。
今、俺は猛烈にここから逃げ出したい。
「どんなお店を持ちたいんだ?やっぱり料理とかそっち系なのか、それとも───」
「春くーん、何油売ってるのかなぁ?」
ウィルを遮った声に身体が凍り付く。
虎口を逃れて竜穴に入るとはまさにこの事か。
「………店長、これはちょっとお客様との親睦を深めるため世間話をしていただけでありまして」
「長すぎ」
「すいませんでした………」
言い訳も一蹴され、謝罪しか出てこない。
ウィルにごめんと手刀だけ切り椅子を元の位置に戻す。
時計を見ればもうすぐ昼時だった。
これは怒られても仕方ないか、他にお客くるかもだし。
そうして店長の脇を通ってカウンターに戻ろうとした。
が、何故か店長は無言でウィルを見つめている。
「失礼ですがお客様、もしかして篠之芽の隣人のイギリス人とは貴方様のことでしょうか」
「え、はい。あと俺はイングランド人です」
キリッと真顔で答えてる場合じゃないぞウィル!
止めようとした頃にはもう時既に遅しだった。
「へー君がウィリアムさんね。ふーん。あのさ、春君の父親として言わせてもらうけど、出会って1日で他人様の家上がり込んでご飯作って貰って挙げ句金が無いからこれからもお世話になりますなんて図々しいと思わない?いくら春君が世話好きで君が日本慣れしてない外国人だからって限度があるよ、全く烏滸がましいね。いい?お父さんは君のこと認めないよ」
「ばっ、何言ってんすか店長!大体アンタ父──」
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