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ああーキンキンに冷えてやがる。
ボトルは頬に刺すような冷たさを与えてくれ、その若干強い刺激に癒された。
それでしばらく暑さを凌ぎながらアパートへの道のり最後の角を曲がった。
これでサッサと暑さに別れを告げ………あれ。
「………人?」
角を曲がってすぐにあるアパートの駐車場、の真ん中に。
人が、倒れている。
何故こんな所に────まさか。
「と、飛び降り!?」
最悪の展開が浮かび慌てて近くに駆け寄った。
体格は良さげで金髪の、見た感じ年の近い男性がうつ伏せになって倒れている。
周りに血は飛んでいない、身体の向きや形も変じゃない、ひとまず飛び降りの線はなさそうだった。
安堵の溜め息が漏れる。
全くビビらせんな、ちょっと本気で心臓止まるかと思ったぞクソ。
冷静になって考えてみると飛び降りたにしてはアパートから離れすぎている、まだ熱中症とかの方が現実的だ。
早とちりもいいところだった。
いや、しかしこの状況が異常なことに変わりはないわけで。
人通りが多いところではないにしろ、真っ昼間に人が倒れているのをこのまま放置は気が引ける。
てか人として駄目だろ。
熱中症で倒れたんなら救急車でも呼べば済むし。
「あのー、すみません。大丈夫ですか」
男の人に少しでも影がかかる位置へ移動して屈み、肩を数回叩いた。
反応の有無で事態の深刻度は大分変わる。
本気で危ないとこまで至ってたりしない、よな?
確かめるように更に呼び掛け、肩を叩く力も強める。
その時男の人の指が少し動いた。
大丈夫だ、意識はある。
「どうですか?起き上がれますか?」
俺の言葉に応えたのか、男の人は自力で身体を捻り仰向けに寝転がった。
そこで初めて顔を合わせる。
────金髪碧眼。
……これはもしかしなくとも外国人さんではないか?
よくよく見れば人工的に作られた金髪とは違った艶のあるブロンドをしている。
今時金髪なんて珍しくないから気が付かなかった。
本来は白いであろう独特の肌は暑さのせいで赤みを帯び、天井の空と同じ青い目は少し虚ろになりながらもしっかり俺を見つめていた。
何だ、このシチュエーション。
いかにも女にモテそうな王子様ルックスの男を逆に抱き起こす羽目になるなんて。
というかもっと差し迫った問題が、俺まともに英語しゃべれない。
マズい非常にマズい、どうしよう手汗かいてきた。
相手は状況が飲み込めていないのか無言でこっちを見つめ続けている。
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