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「そ、そんなベタ褒めしなくてもいいですから!」
「ベタ褒め?何を言っているんだ、君に最も相応しい言葉を述べたまでだよ」
ああああもうだからだな!
確かにちょっと腕に自信はあったけどそこまで言われると逆におこがましいような恥ずかしいような気持ちになるんだ!
耳の先まで熱くなってきて外国人さんの顔をマトモに見ていられなくなった。
「俺は普通の学生ですよ……!」
とにかくここだけはちゃんと伝えておきたくて、小さい声ながらもなんとか言葉を絞り出した。
「ああ、そういやそうだったな。ごめん余りに美味しくて失念していたよ」
「………は?」
「ん?」
あれ、今コイツ、何を失念していたって───
「………んーと、そうだな。君もしかして俺のこと知らない?」
「はい?」
何だいきなり、自意識過剰なのか?
初対面の人間にこんなこと聞くなんて、余程の有名人なんだろうかこの男は。
せっかく少し可愛い感じの外国人に出会えたかもとか思っていたのに、残念だ。
───いやでも、それなら何でコイツの方も俺のことを知ってるような口振りをするんだ?
質問の意味が分からず懐疑的な目で外国人さんの様子を伺ってみると、ちょっと切ないそうに顔を歪めた後ややあって自嘲気味に笑った。
「ああ、うん……そんな気はしていたんだ。そうか、やっぱり知らなかったか………」
そう呟く彼の目尻には涙が溜まり、青い瞳はゆらゆら揺れている。
待て待て、何故知らなかったら泣きそうになるんだ。
本当に知らないと可笑しいレベルの人間なのか?
俺の知り合いにこんなイケメンは居ないぞ。
「えっと、すみません誰かと勘違いしてませんか?」
一応傷付けまいと丁寧に問いかけたつもりが、結果その一言で一層彼を落ち込ませることになった。
次は目頭を押さえ沈痛な面持ちで項垂れている。
というか泣くな。
「そうかー、そうだよなぁー……はぁ。それなら自己紹介から始めようか」
「え、あ、はい」
外国人さんの中で何か決心が着いたのか、ちょっと零れた涙を拭うと引き締まった表情に一変したので俺も真剣な雰囲気を装った。
「俺はウィリアム・カーティス、ウィリアムⅠ世のWilliamに礼儀正しいって意味のCurtis。イングランド出身の19歳で日本には認定留学生として滞在している。さっきは助けてくれてありがとう」
「あ、どういたしまして」
へー観光客じゃなくて留学生なのか、なるほど通りで日本語が堪能な訳だ。
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