会議録1。

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イングランドってイギリスのことでいいんだよな。 イギリスかぁ、イギリスっていったら紳士的なイメージがあったんだけど────何か違う。 見た目は完璧なんだが、出会ってから今までの一連の流れのせいで何かが違うと本能が訴えている。 凛々しい顔で真摯に向き合っているのに今も口周りがベタベタな所とかが全てを物語っている気がする。 ………悪い奴では無さそうなんだけどな。 ちょっとまだ訳分からないことはあるけども。 仕方ないし前に習って俺も自己紹介するかと口を開けば、外国人さん、もといウィリアムさんに手で待つように制された。 まだ自己紹介は終わってなかったようだ。 「で、ここからが大事なんだけど」 多分俺達の何がどのように食い違っているのか今から説明してくれるんだろう。 にしてもさっきからコロコロ表情が変わって面白いな、そして妙にハマってるのがまたなんとも。 「俺の部屋は此処の隣な?」 それで部屋は此処の隣、と─────此処の隣? 「………隣?」 「そう、隣。俺は君のお隣さん」 お隣さん? 待て待て待て。 偶々拾った外国人が隣部屋とか何のドッキリだ? 「いやいやありえないだろ!」 「何故ありえないんだ?俺、1カ月前にこのアパートへ越してきたんだけど。逆に君はどうして知らなかったんだよ、しかも同じ大学なのに」 「同じ大学!?うちの留学生なのか!?」 「………そこまで言われると軽くヘコむな」 俺はウィリアムさんのポーカーフェイスが早くも崩れ落ちまたブルー期に突入したのを完全に流して、テーブルに身を乗り出しその顔を穴が開くほど凝視した。 まじか、うっそだろ、コイツが隣人だったのか。 空き部屋だった隣に最近誰かが越してきたのを知らなかった訳じゃない。 直接そういう情報は聞かなくとも、足音とか人のいる気配とかでそのくらいは何となく分かる。 でも俺も丁度1カ月前から夏休みで朝早くバイトに行っていたため、まだ鉢合わせことがなかった。 帰りに会っていた可能性はあっても、疲れている時にわざわざ通りすがりの人物を逐一把握するなんて物好きのやることだ。 今時御近所付き合いなんて、ましてや一人暮らしで定住するでもないし。 そんな考えのおかげで今の今まで隣人のことなんぞすっかり頭から抜け落ちていたんだが。
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