12人が本棚に入れています
本棚に追加
森の朝は、とても心地よかった。
木漏れ日が、朝靄に反射して光のカーテンを作っている。
小鳥達のさえずりと樹木の湿った薫りに、カイの心は癒された。
猛獣が通った痕跡は、森の奥へと続いていた。
足跡、金色に輝く体毛、踏み分けられた草。
ヤツを見失うことなく追跡する。
二頭は並んで同じ方向に向かっていた。
「やはり、あそこに行くのか……」
カイは、水の流れる音を聞いていた。
音のする方向は、明るい光りが差し込んでいた。
そこは、森が途切れているのだ。
カイは、明かりに誘われるように進んだ。
ゴゥゴゥと、水の音が大きくなって行く。
森の先には、大きな川が流れていた。
「やはり、ここを渡ったか…」
猛獣達は、川を渡っていた。
そうすれば、自分達の痕跡を消す事ができる。
最初のコメントを投稿しよう!