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老人は、男を見て驚いた。
何故なら、涙を流していたからだった。
「どうしたのかね?」
老人の問い掛けに、男は答えた。
「妻が写っています…」
男は、三年前に他界した妻をアルバムの中に発見していた。
そして、老人に妻の最後を話した。
彼の妻は、七海駅の階段から足を踏み外し、打ち所が悪くて亡くなっていた。
アルバムの中には、元気に通勤する愛妻の姿があった。
幾多の想い出が、男の中で甦る。
家事をテキパキとこなす彼女。
笑顔の彼女。
怒った彼女。
愛しい人の面影を必死で追う男は、ついに最後の写真に行き着いた。
彼の妻は、月曜日の朝に事故に遭っていた。
彼がいま目にしているのは、彼女が死亡した日付のものだった。
「!」
彼は、その写真の中に妻以外の顔見知りの女性を発見した。
それは、彼が大学時代に付き合っていて、一方的に別れを告げた女性だった。
その女性は、この写真には不似合いな程の異様な表情で、彼の妻の様子を窺っていた。
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