革命の国

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「アメリア。どうする?」  アインはこの男を信じていいのか分からず、アメリアに判断を委ねた。とはいえ、アメリアも信じるに値するかどうか、決めかねているようだった。ヘイムとは違い、アメリアにとっても面識の無い相手なのだ。信用も何も、情報が足りない。 「えっと……あなた、名前は?」 「ジルだ。ジル・オルワイヤ」  名前を聞いても、やはり記憶の中にその名は無いらしい。アメリアは首を傾げるだけだった。 「すまないが、時間が無い。あまり囚人と話していると、不審に思われてしまう」  男、ジルは通路の先を気にしながら言った。見張りが曲がり角からいつ顔を出すかと不安なのだろう。 「アイン。危険かもしれないけど、ジルさんの話に乗ってみない?」  アメリアの言葉に、アインは黙って頷いた。時間が無いのはこちらも同じなのだ。ヘイムがアメリアに対してどれほどの猶予を与えるつもりか分からないが、最悪の場合、アインは明日にでも殺されるかもしれない。ここを出る為に、ゆっくり作戦会議を開いている暇は無い。 「……決まりだな。ここに送られてくる者はすっかり怯えてしまってることが多くてな。首を縦に振ってくれる者は今までいなかった」 「私達は、ここで死ぬわけには行かない。生きてここを出る為なら、どんな可能性にも手を出すさ」 「ジルさん、私達にはあなたを信じるという選択肢しか無いのよ。今夜、来てくれるのを信じてる」  ジルは二人の言葉に大きく頷くと、牢の前を立ち去った。アインは視界から彼が消えると同時に、大きく息を吐く。 「……最適の一手だっただろうか」 「そんなこと、神にしか分からないわ」  本当に神がいたとしても、と付け加えるアメリアに、アインは苦笑する。ヘイムのような人為的な悪意だけならともかく、アインが持っていた宝剣のような、人智を超越した、理不尽な悪意を知ってしまえばそう言いたくもなるだろう。 「神のみぞ知る、か。神の力は、あの呪いに勝てるのだろうか?」  神がいるとして、とアインも付け加えてみる。アメリアは肩をすくめるだけだった。 「とりあえず、今はジルさんを信じるしかないわね。今の私達は無策。下手に動いても考えても、疲労が募るだけよ」 「そうか。そうだな。夜に動くと言っていたのだから、今のうちに休んでおくとしよう」  アメリアの意見を肯定し、アインは目を閉じる。暫しの睡眠をとるつもりだ。
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