革命の国

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「黙認されていましたが、彼は日常的に町での強盗を繰り返していました。最近では近辺の都市にも行っていたとか」 「それは知っている、体験済だ。だが、何故黙認していた?」  目つきが悪くなっていることは、アイン自身にも分かった。しかし、黙認していなければ女将が死ぬことも、アメリアが心に傷を負う事もなかったと思うとどうしても止められない。 「罪を重ねている兵士は多いんです。かつて、一人の兵士が仲間の罪を上に告発したことが有りました。罪が露わになったものは国を追われ、正義感の有る兵士はささやかながら褒美をいただいたそうです」 「それでいいだろう。何故お前達はそれをしない?」  アインが続けて問う。兵士は顔の向きを変えず、進む先を見据えながら口を開く。 「この褒美を受けた者は三日と経たずに殺されました。分かりますか? 『次は自分がバラされる』、その考えによって彼は、仲間に殺されました」 「そんな……」  アメリアが口を覆う。つまり、黙認していなければ、正しい者が排除され、いずれ非道の者だけが兵団に残るということだ。 「各兵への待遇が改善されれば全部解決する、ってわけでは無いがな。それが重要なことには違いない。だから」  先頭のジルが足を止めた。他の四人も合わせて止まる。目の前に有るのは、大きな扉。 「ここ……父が使っていた部屋だわ」 「自分が王様のつもりでいるんだろうな。ここが、ヘイムのいる部屋だ」  ジルは強く扉を叩いた。ノックのつもりだろうが、粗暴な感じが否めない。 「ジル・オルワイヤです。ヘイム様に至急お伝えしたいことが有り、参りました」 「……入ってください」  中からヘイムの、眠そうな声が聞こえた。まさか、民の暴動の最中で眠っていたのだろうか。 「失礼します。……さぁ、行くぞ」  張り上げていた声を急に小さくして、ジルは扉を押し開けた。彼に続いて、アメリア、アイン、二人の兵士の順に入った。五人が見たヘイムの顔からは、動揺が読み取れた。  しかし、一貫して無表情な男が、ジルの隣に立っていた。黒髪と全身を覆う黒いマントのせいで、影のように見える。 「……ジル? これは、どういうことですか?」 「あなたの支配者としての日が今日で終わるということです、ヘイム・フロウドリィ」  ジルは、剣を抜きながら言った。
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