革命の国

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「私の罪は確定している、と言いたげだな」  アインの言葉に反応し、ヘイムは見下したような目をアインに向けた。 「疑う余地が無いでしょう。エルコックで見つかった焼身死体は、すぐに我が国の兵士だと判明しました。あなたには、有能たる兵士の命を奪った罪があります」 「あれが有能か。アメリアを攫おうとして、エルコックに火を放った奴が」 「火事の原因については、女将ハンナ・エルコックのミスだとされています。誘拐については、報告が来ていません。いい加減なことを言うのは止めてください」 「ふざけないで! 女将が火の扱いを誤ることなんて、有る訳ない!」  アメリアが怒りを露わにして、鉄格子に掴みながらヘイムに向かって叫んだ。声が大きかったので、ヘイムは一瞬顔をしかめて耳を塞いだ。  アインは舌打ちする。軍は、内部の非を無かったことにするつもりらしい。その上で書き換えた罪を全てアインに持たせようとしているのだ。 「事実なのだから仕方ないでしょう。しっかり受け入れてください」 「アインは、女将も殺されたと言っていたけど?」 「見間違いでしょう。もしかしたら、アイザックさんが殺したのかもしれない」 「このっ……」 「アメリア、落ち着いてくれ」  息が荒くなりつつ有ったアメリアを、アインは背後から覆い被さるように押さえた。アメリアの正面で自分の手をつなぎ、抜けにくい小さな輪を作って後ろへ引っ張る。 「とにかく、アイザックさんは有罪になることがほぼ確定しています……アイム、あなたの動き方にもよりますが。数日の猶予を与えますので、どうするのか考えておいてください」 「くっ……」  姑息な手だった。しかし、現状としては切り返す手がアイン達には無かった。ヘイムは満足そうに笑うと、牢の前を去っていく。二人には、その背中を睨むことしかできない。 「……やられたな。まさか、アメリアまで牢に入れられるとは思っていなかった」  アメリアを腕の中から解放しながら、アインが言う。今の状況は、二人にとって最悪だった。  現在、状況を打破する策を持ち合わせておらず、かといって探しにいける状態でもない。ヘイムの言う通り、アメリアを差し出すしか方法は無いのかもしれない。 「……アイン。反対するかもしれないけれど、あなたが助かるっていうなら私は」 「駄目だ」  アメリアが言い終わる前に、その意見を否定する。
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