革命の国

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「お前は、あの男につくことを拒否していただろう。それなのに、私が助かるためにお前を売ることはできない」 「そうだけど……でも、このままだと二人共死ぬわ」  アメリアが泣きそうな顔で言う。確かに、彼女の言う通りだ。他に策はない。このまま誇大化した罪で処刑されることにアメリアを巻き込むよりは、二人の命だけは助かる一手の方が良策に思える。  しかし、この考えには大きな穴が有る。 「アメリア。お前は、あの男が約束を守ると思うか?」  「あ……でも、それに賭けるしか」 「その策に身を委ねるのは危険だ。駄目だったときに、次の手が無くなる」  相手は既に、一度アメリアの父を裏切っている。今回に限っては約束を守ると考えることは、少々虫のいい思考だ。  何より、ヘイムにはアインを助ける理由が何も無い。アメリアさえ手に入ればそれで良いだろうし、何よりアインは『自国兵士の悪行』を知る人物だ。口を封じておくにこしたことは無いだろう。 「じゃあ、どうすれば……」 「ここにいても助けが来る確率は限りなく低い。可能性が有るとすれば、脱走だ」 「脱走……」  アメリアが息をのむ音が聞こえた。あまり頭のいい発想ではない。失敗すれば結局逃げ場がなくなる。ただ、アメリアを売るよりはずっと可能性の有る策に見えた。 「アメリア、ここが城のどの辺りだか、分かるな?」 「ちょっと待って……ええ、多分覚えてる。中央の道を行けば、地下牢から出る階段が有ったはずよ」  格子に張りついたアメリアに倣って、アインもその隣から外の様子を窺う。しかし、すぐに離れてアメリアを引き剥がした。アメリアが見ていなかった左側通路の角から、足音もなく誰かが現れたのだ。 「ちょっと、何を」 「足音は無いが、人が近づいてきている。怪しく思われるとまずい」  文句を言うアメリアに、小声で、かつ早口で状況を伝える。すぐに理解し、アメリアはアインから少し離れて沈黙した。  牢の前を男が通り過ぎる。貴族なのだろうか、綺麗な身なりではあるが、非常に素朴だ。男は二人を一瞥すると、そのまま通り過ぎていった。  それを視界の端で捉え、アインが立ち上がったときには既にアメリアが動いていた。再び格子に張り付き、そして、 「ぴえっ!?」  変な悲鳴をあげた。そのまま尻餅をついたアメリアを助け起こしていると、正面に人の足が見えた。さっきの男だ。
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