革命の国

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「どうしたアメリア、変な声を出して」  アインがアメリアの腕を強く握る。変な声を出すから気付かれたじゃないか、という言外の威圧だ。 「彼女を責めないでやってほしい。やり過ごしたと思っていた相手が牢のすぐ隣に立っていれば、誰でもそうなる」  意外にも、男の方からアメリアを擁護する意見が出た。これはつまり、自分達が外の様子を警戒していることが、バレていたということである。 「やり過ごした? 何のことだ。そもそも、お前が通ったことでさえ知らなかった」 「適当なことを言うんだな……では、彼女は何故私と目が合った?」  とぼけてやり過ごそうと思ったアインだったが、的確に返されてすぐに答えに窮することとなった。アメリアも、そっぽを向いたまま答えない。この場を凌ぐのに丁度いい嘘が思いつかないらしい。  それを見て男が軽く笑った。ヘイムとこの男、短時間に二人から馬鹿にされたような感じがして、アインは不愉快な気分になる。 「そう嫌そうな顔をしないでくれ。君達が望むなら、そこから出ることに手を貸そう」 「な……」 「どうせ、不本意ながら入れられた牢なんだろう? もちろん、手を貸すには一つ条件が有るが」  アインとアメリアは顔を見合わせる。願ってもないチャンスだったが、話がうますぎる。牢に入れられた直後、協力者が自分の方から現れたというのが今の状況だ。怪しまない方がおかしい。  そこで、アインはいくつか質問することにした。まずは、男の言う『条件』からだ。 「条件というのはなんだ? 金を積めと言われても、さっき剣と一緒に持っていかれてしまったし、そうでなくとも貴族が満足できる金は持っていない」  アインは両の掌を見せる。当然何も持っておらず、他の装備としても、今は何も所持していない。「罪人なのにいつも通りの服を着ていられるだけ良心的」というのは、ヘイムの理論だ。 「そんなものを要求するつもりは無いよ。そもそも、私は貴族じゃない。議会の構成員というだけで、ただの国民だ」  構成員。国民の意見を代表して、国政に反映させる為の、いわば中継点ということだ。祖国にいた頃のアインも、同じような役割を期待されていた。 「構成員、か。実際には、結局話が上に通らず反映どころか何も出来ないことも多いんじゃないのか?」 「正解。いや、むしろそれが全てだな」 「え?」  聞き返したのは、アインではなくアメリアだった。
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