革命の国

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「この国の議会は12人で行われる。そのうちヘイムを含む8人が、毎回意見を揃えるんだ」 「……なるほど」  アインには仕組みが分かった。  革命の国・レヴォルツィオーン。王家による圧政をはねのけて、代表者達による多数決という、単純にして至高の手段で民主主義を実現した国。  そんなものは幻想だ。実際には、支配者がベルナード家からヘイム・フロウドリィに替わっただけである。 「事情は分かったから、話を戻そう。条件というのは何だ?」  訊くと、男はニヤリと笑った。格子越しに見える顔からは、男の野心を窺うことができた。 「もう一度、革命を起こす。もう、貴族の優遇政策は残さない。法の上では全員平等、そういう国をつくる」 「その後は、お前が次の独裁者か」  アインは皮肉を込めて言った。革命、クーデターというのは、状況を大きく変えるにはとても簡単な手段だ。例えば、この場合ヘイムの首を討ち取ってしまえば、支配者がいないのだから独裁政権は終焉を迎える。  しかし、そうして悪政の主を取り除いた後は、どうするのか。考えておかなければ、生まれるのは次なる独裁者でしかない。  しかし、男は否定した。 「私は、誰かが望むなら国政から身を引いてもいい。私はただ、見かけだけが民主主義化しているヘイムの天下が許せないだけだ」 「その言葉は、信用に足るのか?」 「ここは革命の国だ。革命なんて、信用が無ければ実行できないさ」 「アイン。この国は何回も支配者の交代が起こっているわ。私達ベルナード家はかなり長い間支配者の座についていたと聞くけど、それでも100年程度だそうよ」  アメリアがアインに耳打ちする。100年といえば、多くても五代程度の継承だろうか。王家と言っていたが、歴史は浅いらしい。 「信頼云々は今言ってもどうしようも無いか。脱走方法は?」 「睡眠薬入りのワインを見張りに飲ませる。どうせあのヘイムの雇われ兵士だ、高い酒を渡せばすぐに酒盛りになる」  男の言葉に時折ヘイムを蔑むような言葉が含まれることに、アインは気づいた。この男がヘイムを嫌っていることが、言葉の内からも外からも伝わってくる。信用していいのかもしれない。 「今晩、私が鍵を開ける。その後、すぐに逃げずに私と共に来てくれ。必ず、ヘイムがこの国を追われる様をお見せしよう」
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