恋外道

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「Black Pegasus」 月華の胤ひとつ 惜しむような指先に 真実の名前だけは 認めさせる気はなかった すべての光陰を 駆ける一頭の黒馬 傷付く蹄 軋む跫 忍ぶ闇に生きてきたのに でもあなたは 私の手綱を執り 瞳を向けさせるの 何故 こんなに これは恋と 教えるの 頸を抱き 溶ける夜の魔女の声で 呼ぶの 封じ込めてきた この身を抉る 呪いの詩 あなただけ美しく 歌うでしょう 私の黒い心臓 薔薇色に染めるように 醜いこの世界で 幾世目覚めて散って それでも私の生きる 場処など何処にも無いはずで いつかの宮廷に 一夜褥で聴いた 啜り泣く音 探し続けて それが生きることと信じて でもあなたを 見詰めたその時 気付いた 薄紅色の 骨組まれた 胸元だけ 鬣を 解く微風 今私の背に翼を生やし 天へ 導くのは愛 愛したあなたの腕 抱き締める ふたりなら 灯りをきっと見失うことなく 翔べるわ いつまでも 今心を 潤すのは その真白い冷たい罰 曇り滲む 黎明の静けさのなか描かれた 墨絵の日々 極彩の甘い 蜜色 悪い天使 ねえ 捕まえて離さないで 時を経て眠るように 物語の 最期の一筆 名を 描き終えて 焼べるまで
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