第1話

3/5
前へ
/5ページ
次へ
『…ピーッ!ピーッ!ピーッ!』 あ、 ……牛乳牛乳、忘れてた。 俺の意識はお天気お姉さんから、レンジの中の牛乳へと移った。 俺の日課、毎朝必ず牛乳を飲む。 冬場はこうして、ホットミルクにしている。……別に身長が足りないとか、もっと伸びたいとかではない、決して。 そうだ、今日はココア入れよ、雪だし。 普段は姉貴が飲んでいる。粉末タイプのココアだ。俺は滅多に飲まないから何杯入れればいいのかわからなかった。裏面を見るとホットミルクにはスプーン大さじ1杯と表示されていた。 ホットミルクをホットココアにしただけで、なんだかすごく贅沢した気分になった。 「どんだけケチくせぇんだ、俺…」 ふとテレビ画面を見ると、えらく薄着の人に目がいった。 ……そういや、俺、さっきまで何考えてたっけ……。あ、お天気お姉さんか。 ズズッ…… 「甘っ……!」 ココアは想像以上に甘かった。 姉貴が食事の量を減らしてるのになかなか痩せないと嘆いているのは、毎日摂取しているこのココアが原因なんだと悟った。 お天気お姉さんのことはいよいよどうでもよくなった。 俺は、極度の面倒くさがりらしい。周りの友達にそう言われているからそうなんだろう。 別に面倒くさいわけではない。自分以外のことに必要以上に頭を使いたくないだけだ。無駄だと感じてしまう。そこに価値を感じない。むしろ、自分のことに頭を使うことでさえ無駄に思えてくることだってある。 俺は、そういう人間だ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加