第1話

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外に出ると冷たい風が頬に突き刺さるように吹きつけてきた。 「うぅ……、寒い」 もっと厚着すればよかった、と家を出てから後悔した。傘をさしているのにもかかわらず、風のせいで雪まみれだ。黒かったはずのコートはたちまち白くなった。 俺が向かっているのは家から一番近いスーパーだ。歩いて5分くらいのところにある。 角を曲がってスーパーが見えてきた時、あまりの寒さに小走りになった。家からここまで、誰ともすれ違うことはなかった。当たり前だ、こんな雪の中わざわざ買い物に出かけるなんて人は姉貴にパシられた俺くらいだろう。 しょぼくれていた俺をスーパーの自動ドアが無言で迎え入れてくれた。店内に入ると同時に、暖かい空気が俺を包み込んだ。 「はー…、生き返った」 じんわりと体が暖まるのを感じながら、ココアが置いてあるコーナーへと向かう。
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