好きな人

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私たち以外に誰もいないこの一軒家で。 二人、一つ12畳の部屋でベッドに横になり 確かめるように強く抱き締めあう。 さっきの事は、お互い口にせず。 今は温もりを感じてるだけで良い。 電気を消しているため、お互いの表情は見えないがそれが逆に良かったりする。 「…なな。愛してる。」 喉を潰すように出された彼の声。 抱きしめている彼の肩が少し震えているのを感じた。 そんな彼を、安心させるように抱きしめ直し 「うん。私も、愛してるよ…蒼甫。」 言ってこなかったその言葉を口にする。 そうしてあげないと、蒼甫が壊れてしまいそうなくらいで。 「なな…。」 私の頬にかかる髪の毛の毛束に すっと長い指先を通し耳にかけた。 「また…俺の女になってくれる?」 細く優しい声でそう尋ねる。 「…蒼甫。他に彼女いるでしょ。……だから、私は彼女じゃなくていい。幼馴染でいいの。」 彼の傍にいて、彼の心の支えに少しでもなれたら…。 「いねえよ。七々実以外の女なんて想えない。お前しか愛せないから。」 頬にそっと、大きな掌が添えられる。 その手の上に自分のを重ねて 「…ほんと?」 「あぁ。だから…戻ってきて?なな。」 見えなくても、彼が今 どんな表情をしているのかが声から想像できて。 私は彼の首筋に手を当て、 そっと彼の唇に口付けをした。
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