好きな人

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「七々実。そろそろ、本題に入ろうか。」 私を抱き上げると、お互いベッドの上に向かい合って座った。 彼の視線が物凄く痛いから、思わず逸らしてしまう。 本題・・・。 なんのことだろうと頭の中を再びぐるぐると回転させる。 ・・・あ。 『なんで、そんな嘘ついたんだよ…。』 そう苦しげに呟いた彼の言葉。 意識を飛ばす寸前にそれが聞こえた。 そして、ふと気づいた。彼が言っている本題とは…そのことだと。 ビクッと体を震わせた私に、 「思い出した?」 ニヤッと恐ろしいほどに笑みを漏らした彼。 今、まさに…蛇に睨まれた蛙だ。 彼にそう訊かれ、ぶんぶんと首を横に振ったが ”また嘘ついちゃったな。”とジリジリと詰め寄ってきて 「いつから七々実はそんなに嘘つきになったんだよ。」 向き合うように膝の上に乗せられた。 彼との距離は、20㎝程で。 何から責められるか怖くなり、 俯きながらぶんぶんと、同じように首を横に振る私に 「いいよ、言い訳でもなんでも聞いてやるから。」 頬を両手で包みこみ、上を向かせられ 強制的に目を合わせられる。 涙ぐむ私とは反対に、不適な程の微笑みを漏らす彼。 この状況をどう乗り越えたらいいのだろうか。 ”誰か、助けて。”と心で願うものの無理な話だ。 母は本日、夜勤。 父は、イギリスで転勤中。 兄は、遠恋中の彼女と3泊4日で広島に旅立っている。 つまり、救世主は今夜現れないということだ。 「けど今度、嘘ついたら・・・もう七々実のこと…壊すかもしんねえ。」
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