好きな人

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ゴクリと喉を鳴らし、覚悟をする。 もう正直に話すしかないのかもしれない。 表情にでやすい私には、もともと嘘がつくことが難しかったんだ。 4年も付き合ってたんだから、嘘くらいバレてしまうのだろう。 「今から訊くこと、全部正直に答えろ。」 真剣な瞳を向けられ、ゆっくりと頷く。 「付き合ってる奴いるってのも、嘘だな。」 全く逸らされない瞳で、射抜かれ。 これを肯定し、首を縦に振ればどんなお仕置きが待っているのだろう。 どちらにしても、恐ろしい。 きっと、横に振ろうが縦に振ろうが運命は然程変わらない。 狼狽える私に気づいた彼が、 「正直に言えば、何もしねえよ。」 そう言われて、少し胸をなでおろす。 「・・・あのね。…あっ。」 言い訳を始めようとした時に、 ベッド脇テーブルの上に置かれた携帯が呑気な電子音をたてて震えだした。 ベッドの上からでも見えるその画面には、 ”着信:シュウさん”と映っていた。 シュウという名前が、苗字かも下の名前かも知らず あの紙に書かれたshuという文字をカタカナにして登録しておいた。 漢字なんて尚更知らなかったからだ。 けれど、こんな時間にどうしたんだろうか。 それに、彼から電話がかかってくることなんて珍しい。 たびたび、私が淋しくなったときに電話をしていたくらいの関係だったからだ。
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