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「・・・テメェ。」
蒼甫の視線は、私から後ろのシュウさんへと移る。
「この指輪のsousukeってまさか君だったとはね。」
蒼甫のドス黒い剣幕にも動揺すら見せずに、
パーカーのポケットから出した、指輪を出し
いつもと同じように優しく微笑むシュウさん。
これが、大人の余裕というものだろうか。
「親に似て、とんだ策士だな。」
怒りに満ちた表情のまま、少しずつ玄関に歩みよってくる彼。
状況が理解できずに、蒼甫とシュウさんをキョロキョロと見返す。
「フッ。ななちゃんが怖がってるよ。その殺気どうにかしてくれるかな。」
蒼甫から守るように、シュウさんが私の肩を優しく抱く。
”大丈夫?”と柔らかい口調で訊かれ、コクリと頷き。
「七々実…。」
すると、蒼甫はピタリと足を玄関の境界線で止め、
哀しげな瞳を一瞬私に向けた。
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