116人が本棚に入れています
本棚に追加
「落ち着け…蒼甫。」
抵抗することもなく、ただブレないまま蒼甫を見つめている。
「なぁ・・・なんでだよっ!!!」
蒼甫が、胸倉をガッと掴み上げたまま、ガンガンと扉に打ち付ける音が
静かな家に響き渡る。
「・・・あの時は仕方なか…」
「いきなり何もかも失う恐怖がどんだけ怖えのかっ…テメェにはわかんねえだろっ!!!」
「蒼甫っ!もう、やめてっ!」
あまりにも殺気立っている蒼甫に危険を感じ、
私は咄嗟に彼の腕を掴むが、あっけなく振り払われた。
「ごめんな…お前も、あの時・・・。」
「今更、同情なんていらねえよ。けど・・・。」
するっと胸倉を掴む手を離すと、力が抜けたように床に崩れ落ちた。
床に両手をつき、頭を下げ床に額をつけ…
「っ…何してるんだ。」
シュウさんに向かって土下座をする蒼甫。
「お願いだから…七々実だけは・・・っ…。」
顔を下げているものの、悲痛な声から彼が泣いているのが感じ取れる。
「頭をあげてくれ。」
彼の足元で床に額をついて土下座をする蒼甫に
そう語り掛けながら、しゃがむ。
最初のコメントを投稿しよう!