好きな人

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「落ち着け…蒼甫。」 抵抗することもなく、ただブレないまま蒼甫を見つめている。 「なぁ・・・なんでだよっ!!!」 蒼甫が、胸倉をガッと掴み上げたまま、ガンガンと扉に打ち付ける音が 静かな家に響き渡る。 「・・・あの時は仕方なか…」 「いきなり何もかも失う恐怖がどんだけ怖えのかっ…テメェにはわかんねえだろっ!!!」 「蒼甫っ!もう、やめてっ!」 あまりにも殺気立っている蒼甫に危険を感じ、 私は咄嗟に彼の腕を掴むが、あっけなく振り払われた。 「ごめんな…お前も、あの時・・・。」 「今更、同情なんていらねえよ。けど・・・。」 するっと胸倉を掴む手を離すと、力が抜けたように床に崩れ落ちた。 床に両手をつき、頭を下げ床に額をつけ… 「っ…何してるんだ。」 シュウさんに向かって土下座をする蒼甫。 「お願いだから…七々実だけは・・・っ…。」 顔を下げているものの、悲痛な声から彼が泣いているのが感じ取れる。 「頭をあげてくれ。」 彼の足元で床に額をついて土下座をする蒼甫に そう語り掛けながら、しゃがむ。
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