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「診療時間なんて、もうとっくに過ぎてるよ」
その言葉に納得させられ、 再び引きずられるようにして歩き出す。
病院の敷地内に入り、その端にある狭い通路を通り過る。そのまま裏手にまわると、確かに奥村くんの言った通りに「俺の実家」があった訳だ。
いや、でもでも!「実家」?
どうしてなんだろうと考えても答えは出ない。
「……あの、なぜここに?」
「ああ、もとはと言えば香織先輩のせいで、俺も悪いし、市原もだし……」
隣では、またブツブツと訳の分からないことを呟く奥村くんの姿。
「あの!」
はっきりしない答えに私は声を張り上げる。すると漸く奥村くんはこっちの世界に戻ってきてくれたようだ。
ハッとした様子で私を見下ろした。
「あ、ごめんごめん!」
「だから、どうしてここに来たんですか?」
「え?ああ、うちの家族に会ってほしくて」
「へ?」
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