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「ほら。行くぞ」
「……………」
「あ、こいつ借りますね?」
右手でバサッと透明のビニール傘をさした唯は、左手で私の手を掴んで歩き出した。
「ちょ!てゆーか、駅前の本屋は?」
無言のまま歩き出す唯の顔を見上げると、また香織先輩の存在を忘れていたことに気がついた。
私は歩きながら後ろを振り返り、先輩に聞こえるように声の音量を上げる。
「あの!お疲れ様です!せんぱーい!また明日!」
先輩は、本日最高の笑顔で会社のビルの前に立って私達を見ている。
「お疲れ~!」
手を振る先輩の姿が、段々と遠くなっていく。
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