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私のアパートの最寄り駅から会社までは二つの駅を挟み、やっと会社の駅まで着くとそこからまた歩き出す。
行き交う人々とそこから流れる朝の風。足下からはカツカツと軽快に響く、私のパンプスのヒール音。
爽快に歩くこと15分で目の前には大きな造りのビル。
会社の入り口を抜け、受付を通りホールへ向かうと、今日も嫌と言う程、私の周りに視線が注ぐ。
エレベーターが降りてくるのを待つこと数分。
「おはよう!向井さん」
ニッコリと私に微笑むイケメン男性社員。
「おはようございます」
すかさず私も鉄壁の造り笑顔でニッコリ。
「 俺、向井さんと話してみたかったんだよね!」
朝からニコニコの彼。
「ありがとうございます」
いつもの様にそつなくかわす私の対応はお手の物なはず。
「今度さぁ、一緒にーー」
彼がそう言いかけたとき、エレベーターの扉が開き、乗り交う人々の群れに連なり私乗り込んだ。
聞こえなかったフリを完全に決め込んで、朝から面倒事とはおさらばだ。
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