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一番人が混む時間帯は僕にとっては憂鬱でしかない。
高校時代でもそうだったけれど、僕は"その対象"になりやすいみたいだ…。
人が詰め込められた電車内では立っていることがやっと。
運良く座れても今度は目的地で降りられない。
「…………っ」
女ではないのに…、後ろの人はお構いなしに触ってくる…。
男だと分かっても悪戯してくるのはただ面白いから。
「どした…?」
隣にいる愁が僕の様子に気付いて小声で問い掛けてくるも、気持ち悪くて怖くて声が出ない…。
体をずらしてもピトリと自分ではない手は追い掛けてくる。
「………しゅ…」
……助けて。
青ざめた僕の顔を見てチラリと後ろを見やると愁がすかさず後ろの人ととの間に半分体を入れて片方の手を僕の肩にのっけて凭れかかってきた。
「愁………?」
何してるのと言う前に、耳元で呟く。
「オレこのまま着くまで寝た振りするから重いかもしれないけど我慢して。大丈夫だ、オレの体でお前には触れられないから」
こんなに密着しててもここにいる全ての人が僕と愁と同じように密着してるから不信がられないと言う。
愁は自分の体に収まった僕の頭を優しく撫でた。
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