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ヴヴ…と着信音の振動がズボンのポケットの中で震える。
『こいつらの相手終わったらすぐ行くから』
愁からメールがきた。
それには帰さず携帯の画面を撫でた。
―――俯いて歩いていたせいで人とぶつかってしまった。
「ごっ…ごめんなさい」
慌てて顔を上げた。
―――え…?
そこにいた驚いている人物…。
地毛の陽に当たって眩しい茶髪は懐かしくて、とても会いたくて会いたくなかった人―――
何でここにいるの…?
「希聡……?」
「…………」
口が震えて上手く声が出ない。
「な……ナツ…」
数秒お互いに凝視していたけれど…高い声が間に入り、それは終わった。
「ナツ~?どうしたのぉ?行こうよぉ」
―――――…。
僕より…柔らかそうで…僕より…ナツとお似合いで…そっか…そういうことか。
ナツは嫌々僕といたんだね。
何でここにいるのか分からないけど、一刻も早くここから離れたくて走った。
――帰ってきたんだね。
でもナツが別れを切り出した理由が、彼女を見つめる目が物語っていて……もう、会わないようにしなきゃ。
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