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走って、走って、ただ彼から離れたい一心でがむしゃらに走って。
気付いたら今自分がいる場所がどこだか分からないくらいになっていた。
「っ………?どこ、ここ…?」
人が行き交い車の音も人の話し声も、僕を惑わせる。
…彼はある種のトラウマだ。
時間が経って漸く落ち着いてきたところだったのに…今会ったら過呼吸になってしまうくらいに。
「――――はっ…ぁ…っ」
苦しい…、息が出来ない。
助けて。
空気の吸い方ってどうやるんだっけ?
助けて。
「ふっ…」
助けて、愁……………。
人が見てるなんて気にしてられない…。
もう、無理――――
目眩がして…倒れそうになった時、誰かに強く引っ張られて倒れずにすむ。
「―――希聡!」
「…はぁっ…しゅ…っ?」
狭い路地に抱えられながら入って、愁に抱き締められた。
背中を優しく撫でられると段々と落ち着いてくる呼吸。
僕の、普通の過呼吸じゃない過呼吸が、無くなっていく。
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