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愁に連れられていったのは大学内にある人気があまりない自動販売機前のベンチだった。
「愁…ごめんね」
「謝んなよー、オレも希聡といる方が楽だから」
愁はいつもそう。
何の取り柄もないお荷物な僕の事を気にかけてくれるのは。
時々…思う。
僕は迷惑ばっかかけてるから彼と同じように愁にとって邪魔にしかなっていないんじゃないかって…。
そんなこと、聞けないけど。
「なんか飲むか?」
「ううん。いいよ」
「そっか」
ギシリ、皮製の椅子が凹んで愁が隣に座る。
「希聡。迷惑とか全っ然思ってないからな」
「え…」
ふいに真顔になった愁が真剣に僕の顔を見て言ったから思わず座っても背の高い愁を見上げた。
「やっぱそう思ってんだな…オレも不安の対象か。オレは好きで希聡の傍にいるんだから、そんなこと思わなくていいよ。オレは彼奴とは違う」
彼奴…?彼のこと?
クラス違ってたのに知り合いだったのかな。
「……うん。ありがとう」
僕は日頃の感謝も含めた愁の優しさに精一杯の笑顔を向けた。
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