1人が本棚に入れています
本棚に追加
目が合った時には凛子は走り出していた。
走って、走って、校門にたどり着くと足を止めて、上がった息を整えた。
「はぁっ…私…何やってるんだろう…」
目が合ったくらいで何を慌てているのだろう。
後ろめたいことなど何もないというのに。
少し混乱した頭の片隅に先程の少年の姿が浮かぶ。
少年は凛子とは違って、小麦色に日焼けしていた。
がっしりした肩、体にはしっかり筋肉がついていた。
鼻筋が通っていて、黒目がちの目はどことなく犬を思わせる。
女の子に人気のありそうな顔立ちだ。
それだけで凛子は自分と彼は全く別の世界にいるように思われた。
(もう、プールには近づかないでおこう)
もともと自分とは相性の悪い場所なのだ。
そんな場所にいる人が自分と同じような人間なはずがない。
なんとなく重い体を引きずって、凛子は校門を出て行った。
最初のコメントを投稿しよう!