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やっぱり水の中は気持ちがいい。
プールサイドに立ち、タオルで体を拭きながら、三宅拓海はそんなことを思った。
今日もよく泳いだ。
夏休みに入って今日で五日目だが、拓海は水泳しかやっていない。
夏休みはできる限り水泳に時間を使おうと思っている。
遊ぶ気なんて更々ないのだ。
(明日も今日と同じ時間からだな…)
拓海がそんなことを考えていた時だった。
かしゃん。
拓海の背後からそんな音が聞こえた。
振り向くと、学校のセーラー服を着た少女が一人いた。
同じ学年だろうか。
色白で華奢な体つきで、なんとなく病弱そうな印象を受ける。
顔色とは対照的に、肩の線で切りそろえた艶やかな黒髪は活き活きとしている。
そんな容貌の彼女は、フェンスに手をかけ、フェンスの向こう側から大きな瞳で拓海を見つめている。
が、拓海と目が合うと慌てて目をそらし、走り去ってしまった。
(誰だろう…?)
拓海は首を傾げながら遠ざかる少女の背中を見つめていた。
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