泡沫の夢

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彼の言葉に、私は首を傾げた。 意味が解らない。 私が理解していない事に気付いたようで、彼は言葉を付け加えた。 「綺麗に死にたい?」 「あぁ」 そういうことか。 理解した私は考えた。 一言で「死にたい」と言ってもそれは決して簡単な事ではない。そもそも、死に方を選ばなければ死ねないのだから。 と、すれば、私はどんな死に方を望んでいるのか。 「……綺麗なのが良いのかな?」 思ったことをそのまま口にしてみる。言ってから、私はもう一度考え直す。 「うー……」 綺麗な死体として残るのは良いな、と思う。けれども、人目に曝されるのは、あまり好ましくない。 私は生来面倒くさがりな性格だ。 これまで引きこもりで、人と話すことも、会うことすらも億劫になっている。なので、死体を発見されて騒がれるのも嫌だと思った。 死体が残ればいずれ見つかるかもしれない。それならば、いっそのこと見つからないように壊された方が楽だ。殺す側としてはそちらの方が面倒だろうが。
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