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上がれと言われた俺は和室の適当な所に安座で座っていた。
対して彼女は座布団の上に正座していた。実に礼儀正しい子だ。
「話って何かしら?」
綺麗な声に聞き入りそうになりながら俺は答えた。
「実はだな。今回の実技試験のペアを探していてな。
三日月さんもペアを探してるって聞いたから」
夜宵の名前は出さなかった。姉は妹を心配するものだ。不用意に名前を出して、両者の仲に何かが起こっては困る。
「咲夜で良いわ」
……
「そ、そうか、じゃあ、咲夜」
雫以外の女性を下の名前で呼ぶのは初めてだから緊張するな。
「なに?」
「俺と組んでくれないか?」
……
…………
………………
「良いわ」
そ、そうか、一瞬駄目かとおもったぞ。女性と話をするのは此処まで難しかっただろうか?
「そうか、ありがとう
取り合えず練習しようか、相手の動きをしらないと立ち回れないしな」
咲夜は黙って頷いてくれた。
ハァ、これでペアの問題は解消した。後は試験に向けて練習するだけだな。
俺は胸ポケットから携帯を手に取りある奴にメールをする。
「白銀さん?」
咲夜は短い身長で体を名一杯伸ばし携帯を覗いてくる。
俺の携帯は色んな人に覗かれるな。てか、男の携帯を覗くととんでもない事が入っているケースが多いので気を付けた方が良いですよ。まぁ、俺は入れてませんがね。
「えぇ、白銀に稽古をつけて貰おうと思ってね」
「それは本当?」
咲夜が目を輝かせ此方を見てくる。やべ、これは雫に及ばなくともそれなりの破壊力が……
「白銀さん、あまり付き合いが良くないって聞いたから……」
そうか、俺はいつも彼奴の隣に居たからな。良く分からなかったが、そう言うことか
「彼奴は前に言っていたんだ。『僕は本来、仲の良い人って言うのは作らないんだけどね。君は特別だよ。』ってね。
そう言うことでは俺は少し特別なのかもしれないな。」
「……そう」
彼奴は超天才が為に色々な奴に狙われる。その為、人を簡単には信じられないのだ。
「じゃあ、咲夜は白銀が稽古をつける3番目の相手になるな。」
「ふふ、楽しみ」
咲夜がこの時初めて俺の前で笑った。咲夜の笑顔は夜を照らす満月の用に美しかった。
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