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ドバァッ!
腹部に走った深い裂傷から溢れ出る鮮血。鮮やかで惨たらしいソレはドロドロとアスファルトを染める。
「グパ、ァッ…!?」
口からも溢れるソレは、確実に江雲寺を苦しめる。
チン。
剣が鞘に収まる音は、不釣り合いな程に呑気だ。
「貴様の負けだ、【腹直筋】の腱鞘を断ち切った。立っているのも、呼吸をするのもやっとだろう?」
「ぐっ、はっ…!はっ…!」
腹の痛みから猫背になり、瞳は酷く困憊していた。
「…ーったな…」
「何?」
江雲寺の呟き。それにロードは呆れを通り越して最早見捨てた。
「もう1度、言ってみろ。戦いをバカにするのも大概に……」
「腹ぁ減った、なぁ……!?」
感情が色濃く篭った呟きは、先程よりもハッキリと聞こえた。
「【ヴァイラス】。」
苛立ち…いや、激情を乗せたロードの詠唱は緑を模した大木の魔力体を走らせた。
ドゴシャッア!!
『ロード選手、容赦なし!!上級の木系魔法でトドメを刺しにかかったぁ!』
メキメキ…
悲鳴にも似た歓声を、ロードは無関心に聞いていた。
「食欲バカが、勝たなければソレすらも満たされん事を知れ。」
メキメキィ…
憤怒の表情の木龍は、江雲寺を潰したまま地面を抉る。
メギィッ…!!
「…?」
だが、ロードの予想に反し。予想外の音が鳴ったー…
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