2641人が本棚に入れています
本棚に追加
『イイか、良河。これは本当にお腹が空いた時に食べなさい、本当にお腹が空いた時だけよ?』
『……何で?毎日食べちゃダメなの?』
『ダメ。』
『どーして?』
矢継ぎ早に質問した幼き頃の『俺』に、母親はこう言ったんだー…
『ソレは、満たすのは食欲だけじゃないのよ…』
ガリ。
丸く、黄色い球形の実を齧った。
「これは、俺の‘‘全てを満たす”実だ。」
メギメギメギィッ…!!
軋む龍は、とうとう原型に亀裂が走った。
ベキャアッ!!
「……アレを素手で握り潰すか、ゴリラか何かか?いや…それどころの話ではないな。」
無表情を装うが、冷や汗が顎に伸びたのが自分でも分かった。
「【禁断の果実】《アダムス》」
目の前に、江雲寺がいた。何も宿していないようで、何かを得た、そんな江雲寺が立っていた。
(…?魔力反応が、皆無だと…!?)
あの状態で立ち上がった事より、その事に驚愕した。
…【魔力察知】の得意なロードが感知できないと言う事は、即ち江雲寺の魔力量はほぼゼロに近い、知っての通り現代の人間は通常の運動にも多少の魔力を消費して行っている。魔力がゼロならばその行動にさえ支障が出るのが、世の常だ。
『俺はお前を見捨てねぇ!それが仲間だろうがっ!!』
二次選考でも魔力量がほぼゼロにも関わらず大輔は立ち上がった。だが、それは霊獣の暴走による異常なまでの身体能力の飛躍により可能となった事だ。常人なら気絶、もしくは指の一本すら動かせない筈だ。
「どうなっている…?何のトリックだ…!!」
だが目の前の江雲寺はどうだ、あの時の大輔とほぼ同じにも関わらず立っている。それどころか今にも力強く地を蹴り、こちらに向かって来そうな勢いだ。
最初のコメントを投稿しよう!