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崩れ落ちた街壁。だが、そこに少年の姿はなかった。
「【裂空破】。」
ゴォッ…!
エレンの耳後から、生温く聞こえて来た詠唱。次の瞬間にはエレンは吹き飛ばされ壁に叩きつけられた。
「きゃっ…!」
ドガァッ!
「エレン!!」
カイは再び足を回転させて少年を襲う。今回は最重要警戒という事か、【獣人化】していた。
いつも咥えている飴を、その辺に捨て去る。
「手加減無用のトップギアだ、死ぬなよ?」
「獣人族…【虎】か、厄介だな。」
金の瞳は猫科特有の瞳へと変わり、頬は少し毛が伸び、手足の爪は鋭角化、歯並びは荒々しく獣のような牙へと変貌した。
挨拶代わりの右ストレート。少年は難なく避けるが、これで終わる筈がなかった。
「カハ!」
素早く右手を引いて、身体の左側面を少年に向け、左ジャブ。
シュボッ…ガッ!
右前腕で防ぎ、今度は少年の右足蹴りが走るが、カイも流石の身のこなし。左から来た蹴りを左斜めに沈む事で回避した。
「グルルルァ!!」
獣じみた怒号で地を蹴り、鋭い爪を掻き立てて振るった。
シパッ。
「っ……!」
僅かに避けられた。頬を浅く走った赤い線は、ポタポタと地に落ちる。
「【爆轟】《ばくごう》。」
「っ……!?」
(いきなり炎系上級魔法!?予備動作無かっただろ…!!)
ボボボボボォンッ!
発動すると、街を破壊しながら爆炎の道がカイを襲った。
「くっそ……」
ドゴォッ!!
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