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チャクラムを撃ち落とされたユーシアは苦々しげに赤いマフラーの少女を睨みつける。なぜ自分を引き抜こうとしていた人間がここで邪魔をするのだろうか。ユーシアの頭を疑問がよぎる。しかしそれも一瞬のこと。ユーシアは一本になったチャクラムを構え直す。普段ユーシアは両手で2組1対のチャクラムを用いて戦う。けれど片方を落としたりした場合の対策を考え片手で構える普段とは違う構えをユーシアは普段から用意していたのだ。ユーシアはゆっくり深呼吸をしながら周りを見回す。黒軍は無事撤退体制に入り安全に拠点に戻れるような状況になっていた。白軍も追いかけてはいるがもう少ししたら完全に振り切れるだろう。
現在この場に残っているのはユーシア、気を失っている由羅、サーベルを持ったまま困惑の表情を浮かべた少女、そして赤いマフラーを着けた赤軍の何者か。サーベルを持った少女はタトと言っただろうか。ユーシアは記憶を探り名前を思い出す。
「なんで赤軍のお前が邪魔をしたんだ?」
ユーシアは低い声で唸るように聞く。
「・・・理由なんてない」
赤いマフラーをつけた少女の声には感情がこもってはいなかった。しかしそれ故に何かを隠しているように感じられる。
「まあいい。この状況なんだ、戦わないわけにはいかないだろ?」
ユーシアが言うと少女は黙って2丁拳銃を取り出し構えた。
一瞬の後一発目の銃声が響き渡る。それを皮切りにユーシアと少女の戦いは始まる。その戦いはほぼ互角であるように見えた。隙を見てユーシアは戦いの途中で落としたチャクラムを拾い体制を整える。その間に少女は銃弾の装填を終える。
ユーシアは距離を一気に詰めた。銃による迎撃を覚悟していたが銃弾による攻撃が訪れることはなく間合いに入りチャクラムを思いっきり横に薙ぐ。
―もらった!
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