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「まったく。君はいつまでたってもそんな態度だね。いい加減僕とムラサキのことを認めてくれないかな」
「認められないといけないような関係になった覚えはないのだけれど」
紫の言葉は聞かなかったことにして、ライディンはやれやれと首を振ると小さくため息を吐く。それに葉は嫌そうに眉をひそめた。
「あなたが姉さまに対して真摯に向き合うのでしたら、俺だって少しは態度を改めますよ」
「何を言うんだい。僕は初めて会った時からムラサキ一筋だよ」
「おお、学園でも一二を争う女ったらしの言葉とは思えないねえ」
ライディンが本気で紫のことを好きなら葉もこんなに邪険にはしないのだが、いかんせん彼は女性に対してだらしないところがある。女性関係の噂が絶えたことはないし彼自身もそれを隠そうとしない。
「仕方ないよ。女性は愛でるべき存在だからね」
「こんなやつのどこがいいのかしら。理解できないわ」
こういう女に対してだらしないところが紫は気に入らないのだ。その上彼女と噂されている人がその場にいるというのに紫に対して好きだ愛してるだのとのたまうその性根。
(まったく。いろんな女から睨まれる私の身にもなって欲しいわね)
紫は葉をしっかりと自分の方へ抱き寄せライディンから遠ざけた。出来ればライディンがいない方の隣を歩かせたいのだが、葉は紫を守りたいのかライディンに紫の隣に並ばせないように間に戻ってくるのだ。
「これぐらいしかできないけど、俺だって姉さまを守りたいんです」
頬を赤めながらそういわれた時の感動は今思い出しても胸が最高にきゅんとなる。
(あの照れ臭いのか髪をくるくるいじりながら上目づかいで見つめられたときの葉の可愛さと言ったらもう、もうっ!)
そんな紫の様子を不思議そうに見つめるライディンにポリーが声をかけた。
「お、おはよう。ライディン」
「やあ、ポリー。おはよう」
ポリーと呼ばれた少年は長い前髪で顔を隠しうつむきながらサササとライディンの隣に並んだ。紫たちにも小さく「おはようございます」と挨拶する。
彼は女たらしで有名なライディンの数少ない友達である。小さい頃からライディンの後ろをついて回っており、その内気な性格と地味な格好のせいでライディンの腰ぎんちゃくと言われている。
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