第一章 姉と弟の日常

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「おはよう。ムラサキ。今日も一段ときれいだね」  銀髪の美青年が後ろから声をかける。 「葉、リディア、早く教室に向かいましょう」 「そうですね。姉さま」 「わあ、なんか早起きしちゃってごめんって感じだねえ」  しかし、3人はその声を無視してすたすたと歩き続けた。リディアだけはちらちらと後ろを振り返り気にしているが。 「今日もつれないね。そんなところも素敵だけど」  そんな態度に青年は気にした風もなく葉を挟んで紫に話しかける。さり気に葉の頭を肘かけ代わりに使っている。 「ムラサキ、今日はお昼どこで食べる? マーティンが今日、ラナーンの海鮮料理を提供するらしいよ。ラナーンは今旬の時期だから食べておく価値はあると思うんだ」 「当たり前のように話を進めないでいただけるかしら。私は今日も葉たちと食べるからあなたは結構よ」  紫は冷たい目を青年に向けながら葉を守るように肩に手をかけて自分のほうに引き寄せた。抱きしめられるような形になった葉は照れ臭そうに笑う。 「ライディンもあきらめないよねえ。大概の男はムラサキのこの態度に引けちゃうのに」  冷たい目の紫とそれでもにこにこと紫を見つめる青年、ライディンを見ながらリディアはため息をこぼす。  この二人の関係はリディアが知る限り変わったことはない。出会ったころからライディンは紫にアプローチをかけ続けており、紫はそれにつれない態度ばかりを返している。つれない態度なのはアプローチしてきた男全員に対してだが。 「彼はマゾヒストなんですよ。姉さまに冷たい態度をとってもらいたいだけです」  そして、葉はライディンに対しては妙に攻撃的だ。いつもは人の悪口など言わないのだが、ライディンの悪口はぽんぽんと出てくる。 「あれ、ヨウ君いたの。あまりにも小さくて見えなかったよ。」 「ついに頭だけでなく目までダメになってしまいましたか。早く病院へ行ったほうがいいですよ」 「君のその背の低さは病院に行ってもどうにもならないだろうね。ご愁傷様」 「頭の病気でありながら俺にも気をかけられるなんて。まだそこまで病気は進行してないようですね。不幸中の幸いといったところでしょうか」  ライディンは紫の最優先である葉が気に入らず、葉は姉にちょっかいをかけるライディンが気に入らない。二人ともにこにこと笑いながら言い合うから性質が悪い。
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