第1話

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「小野寺さん、ちょっといい?」 一通り仕事が終わり、そろそろ帰ろうかというとき、部長に声をかけられた。 オフィスには私たち以外には2、3人しか残っていない。 仕事が遅いから、とかいうわけではなくて。 むしろ、自分では早い方だと思う。 そもそも、初日の私には大した仕事なんてないし。 …ただ、早くここに慣れたくて、あまり家に帰りたくなかっただけ。 「あ、はい…」 軽く返事をして、嫌々ながらも仕方なく、部長のデスクに近付くと、ふと、小さな違和感を感じた。 …なんだろう? あ、眼鏡外してる。 ……やっぱり、こっちの方が…。 いや、私何考えてるんだろ。 部長は一日中かけていた眼鏡をデスクの上に置き、こちらを見ていた。 その視線は、まっすぐと私を射抜く。 目が見えないということはなさそうだ。 「伊達ですか」 「え?」 「……メガネ」 .
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