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「小野寺さん、ちょっといい?」
一通り仕事が終わり、そろそろ帰ろうかというとき、部長に声をかけられた。
オフィスには私たち以外には2、3人しか残っていない。
仕事が遅いから、とかいうわけではなくて。
むしろ、自分では早い方だと思う。
そもそも、初日の私には大した仕事なんてないし。
…ただ、早くここに慣れたくて、あまり家に帰りたくなかっただけ。
「あ、はい…」
軽く返事をして、嫌々ながらも仕方なく、部長のデスクに近付くと、ふと、小さな違和感を感じた。
…なんだろう?
あ、眼鏡外してる。
……やっぱり、こっちの方が…。
いや、私何考えてるんだろ。
部長は一日中かけていた眼鏡をデスクの上に置き、こちらを見ていた。
その視線は、まっすぐと私を射抜く。
目が見えないということはなさそうだ。
「伊達ですか」
「え?」
「……メガネ」
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