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取り押さえられたのは私だけではない。私と同じように見られていた他の女性も次々と取り押さえられた。おそらく、彼女達も私と同じように、この組織の発明品を狙ってきたスパイなのだろう。
しかし、何故、私は正体がバレてしまったのか、分からなかった。
組織の女性に取り押さえられた私の前にボスと若者がやってきた。
「まさか、君までもがスパイだったとは・・・」
ボスは落胆した様子で私を見下していた。そして、そんなボスの手には拳銃が握られてた。
正体がバレたスパイの末路など決まっていた。いずれ、そうなる運命も覚悟の上でスパイを続けてきた。だけど、一つだけ分からないことがあった。
「どうして・・・。どうして、私がスパイだと分かった。完璧に潜入できていたのに・・・」
「ああ・・・。それか・・・。それは、全てこの装置のおかげだ」
ボスは自慢気に持ち出させたスポットライトを私に見せた。やはり、これが狙っていた発明品だったらしい。
「これは、スパイを見分けることができる装置でね。だけど、まだ試作段階で女性にしか効果を発揮できないのだよ」
「女性にしか?」
おかしな発明品だ。スパイを見分けるなど、私達、スパイにとって天敵のような存在だが、どうして女性にしか通用しないのか。
「いったい、どうやって、スパイかどうかを見分けているの」
私は最後までスパイとしての任務を真っ当しようとボスに聞いた。ボスは私を指差す。正確には私の下、床を。
私は視線を床に移すと、明らかに他の人と違っていることに気付いた。
私には『影』があるというのに、他の人には影がない。
「どういうこと?」
ボスが引き金を引いた時、若者は残念そうな顔をして極東の島国に伝わる諺を口にした。
「昔から言うでしょう。影のある女には注意しろって・・・」
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