153人が本棚に入れています
本棚に追加
「ですが、両親に会うという理由は難しいでしょう。以前、里から戻らぬ娼妓が問題になった、と風声を聞いたことがあります」
この話は事実であるが、以前はさほど厳しくなかったのだ。
娼妓の中には律儀な娘もいる。
里に帰しても、親兄弟のため借金を返すために、戻ってくる娘が大半だった。
戻らなかったのは、男と一緒になるために里に帰ると虚偽申請した娘である。
故に帰省の手続きには幾つもの段取りを踏まねばならず、大金も必要であった。にも関わらず、許可が降りるまでに長い歳月がかかるのも珍しくはない。
「え、長ければ一年ですか」
医者から詳細を聞いた都季は、驚愕して目を見張った。
それほど待てぬ、と思慮したことは、火を見るより明らかな表情である。
最初のコメントを投稿しよう!