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「娼妓だと分からないように下男の格好をし……」
「駄目です」
次は面白くない顔どころか、怒りを顕(あらわ)にした顔であった。
都季は、浅はかなのだ。
許可証を持たずに大門を出れば厳しい懲罰が与えられるというのに、都季は捕まらぬつもりでいる。
「少しくらい協力してくれたっていいじゃないですか。
私は見世娘なんですよ。ただで私と寝るなんて、客はきっと羨ましがります!」
「そうですか」
真剣に自賛する都季が可笑しかった。
つい鼻で笑うと、都季の眉間に皺が寄った。
「都季。決まりは守りなさい。
大門を出たいだけなら、客に連れ出してもらう、という手がありますよ。買い物や芝居見物という理由でも、たやすく許可が下ります」
「客に……?
たばからないで下さい。そんなの駆け落ちを許可するような物じゃないですか」
「そう思いますか?」
都季は唇を噛んだだけで何も言わなかった。
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