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毬子は目を見張り、背をのけ反らせた。
玉代、菖蒲、六花の反応も同様である。
四人とも息を飲み、しばし都季に釘付けになった。
「いかがされましたか。
狐にでも化かされたような顔ですね」
都季は冷笑すると、毬子らの横を通り過ぎ、中央の座蒲団に腰を降ろした。
低い位置で、ぼんやりと光る行灯(あんどん)の火がゆらめいている。
唐紅の着物が、やけに鮮烈に感じられた。
***
夜来の雨が、しとどに降り続いている。
朝になると下舎から娼家にやってくる部屋付きらは、廊下の拭き掃除を終える頃であった。
雨で濡れていた肩も、そろそろ乾きつつある。
こんな天候の日は、いつも皆の活力が落ちるのだが、今日に限って廊下を磨く手つきは軽やかに進んでいる。
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