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「あと四百――。商団の誰かに協力を頼んでまいりましょうか」
うろたえた佐吉が、小声で偉進に訊いた。
つらつら辺りを見回せば、商人らは皆、四、五人の集団で待機している。
いずれの商団も、皆で話し合い出資し合ってここを訪れたのであろう。故に、三百だの五百だのという大金が出せるのだ。
「そ――」
そうせよ、と偉進が言いかけたときである。
「しかし本町商も東町商も姿が見えぬな」
腕を組んでいた西町商の一人が首をめぐらせた。
偉進が薬店の主となったのは、ついこの間のことだ。まだ顔を知る者は少ない。
もう一人の西町商人が顔をあげた。
「当たり前のことを申すな。本町も東町も歴代の実績があるのだ。かような手立てをとらずとも五商団の中には入ろうに、わざわざ危ない橋を渡る馬鹿はおらぬだろう」
偉進はしばし悩んだ。
先ほどからの彼等の話を聞くに、賄賂を贈っての裏取引は慣習となっているらしい。
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